駆け出しアナリストLindenの雑記帳

駆け出し証券アナリストです。個人投資家としてやっています。投資だけでなく色々なことを書いていきますコーポレートファイナンスが得意分野です。ついったー⇨http://twitter.com/Linden49606252

ROEはどう見るのか②

前回に引き続きROEを見ていきます。

前回の記事はこちら↓

 
underthelinden.hatenablog.jp



予告通り今回はROEの分解についてみていきます。

 

前回ROEは資本利益率であるとの話をしました。その資本利益率は、「売上高利益率」と「資本回転率」の二つに分けることができます。早速見ていきましょう。

 

        資本利益率 = 売上高利益率 ✖ 資本回転率
              = {\displaystyle\frac{利益}{売上高}} ✖ {\displaystyle\frac{売上高}{資本}}

と分解できます。それぞれを解説すると、「売上高利益率」は売上に占める純利益を示しており、どれぐらい仕入れた商品に利ザヤを加算して売り上げているのか等、企業の利益構造がわかります。

一方「資本回転率」は、資本に対する売上を示しており、持ちうる資本に対して売上が単純にどれぐらい循環したのか、ひいては資本がどれだけ効率的に使われたのかを表しています。

一般的に商業を営む企業は、仕入れた商品に利ザヤを加算して販売し、また仕入れて販売するという工程を何回も循環させることによって成り立っています。ここで示した利益率の分解はまさにその企業の営業の様子を表していますから大変重要です。

また資本利益率は一般的に高いほうが望ましいですから、これを上げるには「売上高利益率」と「資本回転率」を上げればいいのだと単純に考えられます。しかしこれには注意が必要で、売上高に対しては両者はトレードオフの関係にあるということです。どういうことかというと、売上高を増やすと確かに回転率は増加しますが、純利益を増やせないと純利益率がおちこんで結果的に資本利益率向上につながらないおそれがあるということです。純利益率を増やす、効率性をより高める、これらのバランスをうまく考えることがとても大事です。

さて、ROEをこれにあてはめてみましょう。

            ROE = 純利益 ✖ 自己資本
           = {\displaystyle\frac{純利益}{売上高}} ✖ {\displaystyle\frac{売上高}{自己資本}}

となります。簡単ですね。



ROEにはこれまた極めて重要な分解がもう一つあります。ご存知の方も多いでしょう、デュポン分析です。これはアメリカのデュポン社が考案して経営に利用したもので、かなり昔に作られたものではありますが必ず押さえておく必要があります。

ROE = 売上高純利益率 ✖ 総資本回転率 ✖ 財務レバレッジ

と分解することになります。上で示した分解にない要素として、財務レバレッジがあります。これは[自己資本÷総資本]で計算される、一般的に自己資本比率と呼ばれるものの逆数です。財務レバレッジは[総資本÷自己資本]ですから、自己資本以外の例えば借入金を増やせばそれだけ自己資本に対する総資本が増え、それだけレバレッジの値も高くなります。レバレッジとは梃のことをさし、FXをやる方にはおなじみかもしれません。ここでは、自己資本に対して、償還義務のある財務リスクの高い借入金や社債といった負債額を高めることによって総資本を増やし、見せかけの利益率を高める効果があるため、レバレッジと呼ぶわけです。

デュポン分析の分解式を見て、ROEを高めるためには、財務レバレッジを高めればよいというのは短絡的です。まず、財務レバレッジを高めること自体企業のリスクを増やすことになります。自己資本にも資本コストを考えなければなりませんから当然無リスクではありませんが、借入金や社債には明確な償還義務があるため、負債はリスクの高い資金調達手段であると言えます。それらを使って総資本の値を増やすこと自体、企業の安全性を脅かします。また、お気づきの通り、デュポン分析の左二つの積はROAですから、ROEROA✖財務レバレッジという側面もあり、財務レバレッジを効かせて見せかけの総資本を増やしてもそれが結果的にROAの低下につながれば、ROEが増加しないことも考えられます。

以上のことから、前回の最後に申し上げた通り、ROEは高ければいいものではなくその中身が大切であることが示せました。
これらの分析手法はいろいろな形に応用できますから、ぜひしっかりと理解すべきだと考えています。
今回でROEの見方の解説は終わりです。これを読むだけでもかなり財務指標の見方がわかっていただけたのではないでしょうか。