ROEはどう見るのか①
本記事よりしばらく、主要な財務指標の見方について書いていきたいと思います。
扱う指標は私も投資に際し参考にするものになります。
今回は詳しい方も多いでしょう、自己資本純利益率(以下ROE)を見ていきます。
まずROEは何を見る指標なのでしょうか。ROEは英語の「return on equity」の頭文字をとったものです。この英語が示すのは、自己資本に対する収益率です。つまりこの指標は、自己資本に対してどの程度利益を上げられたかをみる、つまり企業の効率性を示す指標なのです。このような指標を資本利益率といい、ほかにROAがあります。ROAはROEが自己資本すなわち株主の持分に対する収益率であるのに対して、債権者を含めたすべての資産に対する収益率であるという違いがありますが、基本的な構造は変わりません。
ROAについての記事↓
さてROEをもっと見てみましょう。定義は割と人それぞれのところがあるのですが、私は以下のように定義しています。
また、ここでの自己資本は、貸借対照表の右側の「株主資本」と「その他の包括利益累計額」を足したものとします。非支配株主持分や新株予約権についてはこれらを含みません。これらの会計知識についてはいずれ書いていこうと思います。
また少し進んだ議論として、分子の当期純利益を包括利益にするべきではないのかという話があります(包括利益が何かという方は飛ばしてもらってかまいません)。少し前から企業の持合株の含み益等も企業の利益として重要視するべきだという意見の元、包括利益なるものが開示されるようになり、この包括利益をROE上どう扱うのかと思案される方もいるかもしれません。これについては私は従来のROEの使用を継続するほうが無難だと考えています。
以上等の理由より、包括利益を分子として利用するのはおすすめしません。また詳しくは書きませんが、当期純利益のほうが包括利益よりも株価水準との連動性が高いという事実が報告されているようです。ですから従来のROEの継続使用が望ましいです。
さて少し話がそれました。ROEはどれぐらいの目安がいいのかと思案する方もよくおられるでしょう。一般的に10%を超えると高水準と言われます。一方でリスクをとらないことを指摘される日本企業は5%を下回る企業も少なくありません。近年になってようやくそのような日本企業にメスを入れようとの機運が高まり、6%がその目安になっていると思います。ただもちろん業界によって差がありますし、小売りのような利益の年度間のボラティリティが少ないものはROEが低めです。逆にIT業界のROEは高めです。
自分でROEが高い業界低い業界を調べてみるのも勉強になります。
次回はこの指標を分解してさらに掘り下げていこうと思います。
ROEは高ければいいものでもないことを示していきたいです。